建物にも健康診断を!建物の長期利用を実現する耐久性調査とは?
既存建物の寿命が分かる!
長期利用を目指すために必要な調査を徹底解説!
2024年7月17日更新
皆さんが普段過ごしている建物。外観や内装が新しいと、「きれいな建物」「新しいから安心」という印象を持ちますよね。
一方で、古そうな建物は「どのくらい前に建てられたのだろう」「この建物だいぶ古そうだけど大丈夫かな?」と感じる方も多いのではないのでしょうか。
また、外観などの見た目が綺麗でも、直接見ることができない部分、つまり構造部材と言われるものに問題がある場合もあります。
問題がある構造部材を放置しておくと、やがて建物全体に影響が出てしまうかもしれません。
人間の健康診断と同じで、建物もひとつひとつの構造部材を確認しないと全体の状態を把握することは難しいのです。
建物は人々の生活や未来に関わってきます。建物を利用する人も、管理する人も、"健康状態"を把握することは、とても大切です。
では、建物の健康状態を確認するにはどうすれば良いのでしょうか。
中には建物の寿命が気になる方や、生まれ変わらせる(建替する)かどうかを検討されている方もいらっしゃるかと思います。
その場合、解決の手がかりになるのが「建物の耐久性調査」です。
人間でいう健康診断のようなもので、主に鉄筋コンクリート建造物(RC造)の建物が対象となりますが、コンクリートや鉄筋などの状態を調査するものです。
今回の記事では、耐久性調査の内容やメリットを分かりやすくお伝えしていきます。
古くなった建物を利用・管理されている方や、建替を検討されている方などは是非最後までご覧ください。
目次
1.耐久性調査とは
耐久性調査は、鉄筋コンクリート建造物(RC造)の既存建物において、建築時から年数が経っている・老朽化が進んでいる建物に対して調査を行います。そして、その建物に使用されている構造部材(コンクリートや鉄筋、梁など)に様々な調査・試験を実施します。そこから得られた結果をもとに、老朽化の進行具合や、寿命を判断することが可能になるのです。この評価は、建物の耐久性を把握し、適切な補修や改修を行うために重要となります。
建物には、構造部材だけでなく、窓や扉などの非構造部材など、様々な素材が様々な場所で使われています。それらは各々で寿命が異なります。また、環境によっては推定よりも長く持つものもあれば、思いのほか劣化が進んでいるものもあります。例えば、窓などは劣化しても目に見えますし、交換もそこまで大掛かりではありません。
しかし、構造部材は直接目にすることが難しいうえに、建物の構造そのものに影響があるため、建物の寿命にも大きく関わってきます。そのため、築40年ほど経過している建物は一度耐久性調査を行うことが望ましいでしょう。 人間が定期的に健康診断を行い、身体の各部分の状態をチェックする感覚と同じように、建物も各部分の状態をチェックする。耐久性調査はまさに、建物の健康診断と言えます。
2.耐久性調査の調査方法
耐久性の調査方法としては、様々な手法が存在します。
ここでは代表的な調査方法を紹介します。
■鉄筋の調査
既存建物の耐久性を調べるためには、鉄筋の状態や、鉄筋のかぶり厚さ(鉄筋の外側からコンクリート表面までの最短距離)を知る必要があります。なぜならば、建物の構造に直接関わる鉄筋のかぶり厚さは、鉄筋の劣化(酸化)・建物の長寿命化に左右されるからです。鉄筋がコンクリートから適切に覆われていると、建物の強度や安全性が保たれます。
鉄筋を調査する手法としては2つあります。
○破壊法:壁・コンクリートをはつり、鉄筋を露出させ直接的に調査する方法
○非破壊法:鉄筋探知機やX線を使用し、配筋状況を間接的に調査する方法
前者は鉄筋を露出させるので、正確にかぶり厚さを測定することができます。さらに、鉄筋の状態を直接確認することも可能です。また、次に記載するコンクリート中性化試験を実施する場合は、この破壊法を用いて試験を行います。実際に壁を破壊して調査を行うので、非破壊法に比べると時間は掛かります。
一方、後者は、壁やコンクリートを破壊せずに、配筋状態を調べながらかぶり厚さを測定していくことができます。壁などを破壊せず調査が可能なので、スムーズに調査を進められることが魅力です。非破壊法は間接的な手法ゆえ、破壊法の方が高精度な調査と言えます。
■コンクリート中性化試験
建物の構造部材であるコンクリートがどれだけ中性化しているかを調査するための試験です。コンクリートを一部取り出し(コンクリートのコア採取)、フェノールフタレイン溶液を使用して、中性化状況を調べます。フェノールフタレイン溶液はアルカリ性だと赤紫色に変化しますが、酸性であればあるほど無色になります。つまり、採取したコンクリートコアが無色の割合が多ければ、酸化が進んでいる=劣化していると判断されます。
コンクリートは元々強アルカリ性です。しかし、建築年数が経過するうちに建物の外側・内側から二酸化炭素が壁を通過し、コンクリートにまで到達します。すると、コンクリートが少しずつ酸性に向かっていく、つまり中性化する可能性があります。コンクリートが中性化すると、鉄筋にまで悪影響を及ぼします。鉄筋は、酸化すると錆びてしまいますよね。鉄が錆びていくと、例えば腐食が進みぼろぼろになってしまいます。腐食が進むと最悪の場合鉄筋が落下するなど、建物全体に被害が広がります。
つまり、コンクリートの中性化が分かるこの試験は、建物の寿命やにおいて非常に重要な指標となります。
耐久性調査にはこの他にも様々な調査方法があります。視覚的な結果だけでなく、数値化して結果が出るので、劣化度合いを具体的に知ることができます。
これはとても安心ですよね。
3.耐久性調査のメリット
耐久性調査を実施するメリットとしては、主に3点が挙げられます。
①建物の寿命を想定することができる
既存建物がこの先どのくらいまで保たれるのか、つまり寿命を想定することができれば、建物を適切に管理することが可能になります。
また、建替えすべきか、一部修繕やリニューアルするだけで良いのかなどの判断材料にも繋がり、コスト削減にもなります。
②建物の構造部材の劣化進行度合いが正確に分かる
先程もお伝えしたように、建物の劣化度合いは外観だけでは判断できません。
構造部材の調査をすることで、各部材の劣化進行度合いが分かります。
数値が出ることにより、より現時点での建物の正確な状態を知ることが可能になります。
③建物の長期利用も夢じゃない!コストと環境、どちらにも優しい調査
耐久性調査をすることにより、既存のまま建物の利用が可能と分かれば、建替える必要はなくなります。
建替え不要となれば、資材や構造部材を余計に消費することもありません。これは環境への配慮にも繋がります。
建築費の高騰化もまだまだ続く見通しですし、SDGsと言われている世の中でもあります。
コストにも環境にも優しい耐久性調査は、今後ますます必要とされるでしょう。
4.まとめ
高度経済成長期以降、日本各地で沢山の建物が誕生しました。その影響もあり、現在、40年、50年以上の建物が多く存在しています。
老朽化が進む建物でも、構造部材の状態が良ければ長期利用が実現するでしょう。
もちろん、既存建物を解体して新しい建物を誕生させることで、例えば街が活気づいていくといったメリットもあります。ですが、健康状態が良好な建物はなるべく永く利用したいものです。
築年数が経過した建物を存続させるか解体するか、適切に判断するためにも、まずは耐久性調査を活用することをおすすめします。
調査をして引き続き建物の利用が可能とのことであれば、今後も定期的に調査を実施すると安心です。
建物を長期利用することができれば、コストや環境、資産など様々な面でもメリットがあるでしょう。
建物の"健康診断"を実施して、長寿命化を目指しましょう!
耐久性調査は「構造調査設計事業部」にお任せください!
東京ソイルリサーチが力を入れているのは地盤調査だけではありません。
50年の歴史をもつ、構造調査設計を専門・得意とする"構造調査設計事業部"が、日本各地の建築構造物を全力でサポートしています!
長年、建築構造物とも向き合ってきた私たち。もちろん建物の耐久性調査も豊富の実績があります。
お客様のニーズや建物に合わせて、多数ある調査の中から最適な調査方法を選定して行います。
調査~診断だけでなく、劣化原因の推定、考察や、それぞれの状況に合った補修などの提案まで行うことが可能です。
また、様々な資格を持った技術者が所属しているので、チームで力を合わせてスピードを止めることなく、一貫して解決まで寄り添います。
建物の耐久性に課題をお持ちの方は、是非一度ご相談ください!
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