地盤の鉛直・水平透水試験
開発の背景
地盤の鉛直透水試験は、透水異方性を有する砂地盤の鉛直方向の透水係数について鉛直透水試験装置を用いて求める試験です。根切り・掘削工事などにおいて地下水処理工法を検討する際に地盤の透水異方性を考慮しないと、揚水量や周辺地下水位低下量の予測値と実測値に大きな差を生じることがあります。最近では遮水壁の根入れ深さと揚水量の関係を予測したり、地盤条件が複雑で井戸理論を適用しにくい場合の解析にFEM浸透流解析による地下水シミュレーションが利用されることも多くなってきています。地下水シミュレーションでは水平方向と鉛直方向の透水係数をパラメータとして設定するが、これまで水平・鉛直方向の透水異方性を評価できる調査・試験方法が確立されていなかったため、解析結果と実際との間にギャップを生じる場合がありました。このため、より簡便で精度良い地盤の透水異方性評価手法が求められてきました。
試験装置の開発は、竹中工務店技術研究所殿との共同研究として2002(平成14)年5月から開始し、2003(平成15)年9月に実用化に成功しました。その後2010(平成22)年まで改良を加えながら東京・名古屋・大阪の各都市で実績を重ねました。さらに適用範囲を広げるために2012(平成24)年5月より小型化に着手し、2014(平成26)年2月には小型化装置の実用化に成功しました。ロッドの直径をφ60mmからφ40.5mmに変更することで、従来用いてきた大型のボーリング機械を利用せず、現場作業規模の縮小を図ることができました。
なお、「地盤調査の方法と解説」(地盤工学会編、2013)でも紹介されています。
目的
地盤の鉛直・水平方向の透水係数の把握
利用法
- 掘削工事の遮水壁の長さや排水量の合理的、経済的な設計
- 地下水環境の保全
鉛直・水平透水試験装置の特徴
- 鉛直・水平透水係数を単一ボーリング孔で評価が可能
- 大深度(GL-50~60m)まで調査可能
- 定常法透水試験による試験時間の短縮
- 試験土層の目視観察や土質試験への試料提供が可能
- 鉛直透水試験終了後の水平透水試験が可能
- 鉛直・水平透水係数の実測による透水異方性の評価が可能
鉛直・水平透水試験装置の適用例
- 掘削工事における地下水処理設計
- 地下線状構造物による地下水流の遮断の影響評価
鉛直透水試験装置の概要
試験装置はチューブサンプラーに間隙水圧計と揚水ポンプを内蔵した構造であり、チューブ内に試料を採取した状態で装置を引き上げることなく、原位置試験深度で鉛直・水平透水試験を行います。
技術カタログ
単孔を利用した鉛直・水平透水試験
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